再発の行方(36)

全身ガンとその終わり (文:金田 信一郎)

「血液の結果もいいですね。じゃあ、予定通り今日は2種類でいきましょう」

担当のK医師にそう言われ、いつものように抗がん剤治療が始まる。

だが、今日は1つ、聞いておきたいことがあった。抗がん剤治療の間の2週間、多くの人と会い、話をする。その中にガン患者もいる。

日頃はガンとは関係のないテーマを取材し、執筆している。それでも、ガンについて考えを巡らせることは少なくない。

いや、ほぼ毎日、ふとした瞬間に頭に浮かび、思考を巡らせる。

そして、過去の診療記録や医療医学のメモを読み返す。

すると、これまで頭を素通りしていた「言葉」が、時間を経て、意味を膨らませていることがある。

すでに診察を終えたと思っているK医師に、こう問いかける。

「先生、今の私の状態というのは、食道ガンステージ4bですね」

K医師が頷く。彼の表情は冷静だが、こちらが何を言い出すのか、心の中では少し構えているだろう。

「外科の先生にこの前、聞いたことなんですけど、『全身ガンのひとつの表現系』っておっしゃられたんですね」

K医師の表情が固まったように思えた。

「全身ガン」。その言葉を、1カ月前に聞いた時は、さらりと聞き流していた。だが、その言葉は、全身にガン細胞が散っていることを指す。で、体のあちこちで、すでに「ガン化」している可能性がある。今はそのうちの4個が1㌢を超えて、CT画像に映って再発ガンと診断されている。その場所は、食道とは少し離れている。腎臓に近い所である。

つまるところ、私の病気は、名前こそ「食道ガンステージ4b」となっているが、もはや「食道ガン」ではない。「全身ガン」なのだ。

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